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4.頭部


 アリの頭部は,頭蓋,頭盾,触角,複眼,単眼,口器からなる。頭部各部の名称は図 1.3に示した。頭部は種や属を区別する際に非常に重要な形質となる。

 頭蓋(cranium):頭蓋の後方部は後頭部(occiput)と呼ばれ,しばしば後頭隆起縁(occipital collar)とよばれる隆起縁が発達することがある。触角の挿入部は額隆起縁(frontal carina)と呼ばれる張り出しでおおわれることがある。また属によっては,触角の付け根から後方に延びる触角収容溝(antennal groove)が発達している場合もある。頭盾と額隆起縁で挟まれる三角形の部分は額域(frontal area)と呼ばれ,その後方正中線にはしばしば額溝(frontal groove)と呼ばれる溝が延びることがある。

 頭盾(clypeus):頭盾は頭蓋と堅く接続しており,その境界(前額縫合線:ぜんがくほうごうせん=epistomal suture)は不明瞭となることもある。頭盾は属によってその発達程度は様々であり,アギトアリ属のように極端に縮小していることもある。また頭盾前縁の形状はしばしば属を区別する際に重要である。

 複眼(eye)と単眼(ocellus):複眼はいくつかの個眼(facet)からなるが発達の程度が様々で,1個の個眼のみからなったり全く消失することもある。複眼の位置や発達の程度は分類上重要である。単眼は働きアリでは消失している場合も多い。

 触角(antenna):触角は通常働きアリや雌アリでは 12節,雄アリでは13節であるが,この数は属によって減少していることもある。触角の節は基部からの順で呼ぶ。第1節は柄節(scape)とよばれ,比較的長く,他の部分と膝状に関節している。第2節以降はまとめてべん節(funiculus)と呼ばれる。先端の数節はしばしば太く長くなりこん棒部(club)を形成することがある。触角の節数,柄節の相対的な長さ,こん棒部の有無やその構成節数などは属を区別する際の重要な形質となる。

 口器(mouth parts):口器は上唇(labrum),大あご(mandible),小あご(maxilla),下唇(labium)からなるが,このうち分類によく使用される形質は大あごの形態および歯の数や,小あごひげ(maxillary palpus)と下唇ひげ(labial palpus)の節数構成(palp formula, PF)である。大あごでは左右が噛み合わさる側をそしゃく縁(masticatory margin)といい,しばしば歯を備える。歯は頭盾に近い方が基方となる。小あごひげや下唇ひげは頭部を腹面から見ると確認することができる。この節数構成は PFとして,“小あごひげ,下唇ひげ”の順で示される。例えばPF=6, 4なら小あごひげが6節,下唇ひげが4節のことである。

解説者:緒方 一夫