アリ類は基本的には働きアリ,雌アリ(=女王アリ),雄アリの3つのカーストか らなる。これら3つのカーストは外形的には容易に区別がつく。しかし,雌アリや雄 アリといった生殖階級はまだすべての種について明らかになっていないというのが現 状である。 働きアリ(worker):働きアリは翅がなく,胸部各部の融合や退化が著しく,とくに後胸背板は消失する。働きアリは性的にはメスであるが,卵巣などの生殖器官は退化しており,慣例的に次の“雌アリ”とは区別されている。種や属によってはしばしば大きさの異なる働きアリをもつ場合がある。その中で,特に頭部が大きく,小型のものと明らかに区別がつく個体を兵アリ(soldier)という。属によっては兵アリによらないと同定が困難な場合もある。 雌アリ(female, queen):雌アリは頭部に単眼があることや胸部の形態以外は基本的に同種の働きアリと同じである。胸部は翅があるため(脱翅していても)中胸背板が発達し,後胸背板もはっきりと認められる。 雄アリ(male):雄アリは一般に頭部が雌アリや働きアリと異なり,複眼や単眼が発達し,触角の節数が多く柄節は短く大あごは退化しているが,胸部は雌アリ同様よく発達している。検索表で示す種や属を特徴づける形質は雄アリには適用できない場合が多い。 解説者:緒方 一夫 |