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フシボソクサアリ
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Lasius nipponensis |
原著論文
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Forel, A. (1912) Quelques fourmis de Tokio. Annales de la Socie´te´ Entomologique de Belgique, 56: 339-342.
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シノニム
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Lasius fuliginosus var. nipponensis Forel, 1912 (in part).
Lasius fuliginosus var. nipponensis: Wilson, 1955.
Lasius nipponensis: Santschi, 1941; Maruyama, 2005; 丸山,2005.
Lasius crispus Wilson, 1955.
Lasius crispus: 日本蟻類研究会, 1988, 1991; アリ類データベース作成グループ, 1998.
フシボソクサアリ: 岡本, 1969.
Lasius capitatus: Kupyanskaya, 1989; 寺山&木原, 1994; アリ類データベース作成グループ, 2003a, 2003b; Japanese Ant Database Group 2003.
[以下の文献中のLasius nipponensisは別種(クロクサアリ参照): Espadaler, 2001; アリ類データベース作成グループ, 2003a, 2003b; Japanese Ant Database Group 2003].
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解 説
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体長4.0-4.5 mm。体は漆黒色。腹柄節は側方から見て逆V字型。腹柄節は前方から見て中央部が最も幅広く,先端に向かうにつれて細まる。背縁は弧をえがき,中央部にへこみはない。
雌アリの触角柄節および中胸背板は沢山の立毛がみられる。腹柄節は側方から見て高く,先端がやや突出する。
フシナガケアリの巣から本種の雌アリが得られており (園部,1984),一時的社会寄生の可能性が示唆される。結婚飛行は岐阜では9月に行われた記録がある (Yamauchi, et al., 1986)。
Radchenko(2005)により再検討され、改めてL. fuliginosus のシノニムから復活されるまで、本学名の取り扱いには多くの混乱が見られた。丸山(2005)がすでに紹介しているが、以下にその状況を挙げる。
1)Wilson (1955) によって記載されたL. crispus はRadchenko(2005)により、本種L. nipponensisのシノニムとされた。
2)Kupianskaya (1989) は、本種を参照しながらこれをL. capitatusと考え、さらに記載情報からL. crispusをL. capitatusのシノニムとした。しかし実際にはKupianskaya (1989)が参照した本種L. nipponensisとL. capitatusはそもそも別種であるため、これらの取扱いは誤りである(Radchenko, 2005)。
3)Espadaler ら(2001)は、本種の学名L. nipponensisを別種(L. fuji)に対して使用し、後者(L. fuji)がL. fuliginosusと異なっている事を理由にL. nipponensisをL. fuliginosus のシノニムから復活させているが、これも誤り(Radchenko, 2005) 。
混乱を避けるために日本国内だけに限定してみると、フシボソクサアリには和名一覧(日本蟻類研究会編, 1988)や検索と解説(日本蟻類研究会編, 1991)ではLasius crispusという学名が使われ、県別分布図(寺山・木原,1994)ではLasius capitatusが採用されている。にもかかわらず日本産アリ類画像データベース1995年版や1998年版(アリ類データベース作成グループ, 1995, 1998)では再びLasius crispusに戻しており、このあたりにも混乱が見られる。データベース2003年版(アリ類データベース作成グループ, 2003a)ではLasius capitatusへと再度の変更がなされていたが、Radchenko(2005)の研究に従い今回改めてL.nipponensisへと変更することになった。
ところが、データベース 2003年版(アリ類データベース作成グループ, 2003a)ではクロクサアリにL. nipponensisという学名がすでに使用されていたことが混乱にさらなる拍車をかけている。本種フシボソクサアリL. nipponensisと、2003年版のL. nipponensisが「別物」だということに注意する必要があるだろう。
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分 布
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北海道,本州,四国;極東ロシア,朝鮮半島,台湾
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文 献
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- Sonobe, R. (1984). Ants living in forest. . Insect (Kontyu-Aiko-Kai, Tochigi-ken), 35, 1-7. .
- Yamauchi, K., K. Ito & N. Suzuki (1986). Observations on the nuptial flights of the ant genus Lasius. . Sci. Rep. Fac. Educ.Gifu Univ. (Nat. Sci.), 10, 1-11.
- Kuznetsov-Ugamsky, N. N. (1927). Materialy po mirmekologii Turkestana. 3. Russkoe Entomologicheskoe Obozrenie 21: 186-196.
- Wilson, E. O. (1955). A monographic revision of the ant genus Lasius. . Bull. Mus. Comp. Zool. Harv., 113, 1-201.
- Kupianskaya, A. N. (1989). Ants of the subgenus Dendrolasius Ruzsky, 1912 (Hymenoptera, Formicidae, genus Lasius Fabricius, 1804) of the Far East of the USSR. Ent. Obozr. 68: 779-789. (In Russian with English summary.)
追加引用文献:
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アリ類データベース作成グループ(1995)日本産アリ類画像データベース.日本蟻類研究会, 東京.
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アリ類データベース作成グループ(1998)日本産アリ類画像データベース.日本蟻類研究会, 東京.
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アリ類データベース作成グループ(2003a)日本産アリ類画像データベース 2003.アリ類データベース作成グループ, 仙台.
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アリ類データベース作成グループ(2003b)日本産アリ類全種図鑑. 学研.
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Espadaler, X., T. Akino & M. Terayama (2001) Taxonomic status of the ant Lasius nipponensis Forel, 1912 (Hymenoptera, Formicidae). Nouv. Revue Ent. (N. S.), 18: 335-341
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Japanese Ant Database Group(2003)Ants of Japan. Gakken.
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Maruyama, M. (2005) A new synonym in the subgenus Dendrolasius of the genus Lasius (Hymenoptera, Formicidae, Formicinae). Bull. Natn. Sci. Mus. Tokyo, Ser. A, 31: 115-117.
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丸山宗利 (2005) 日本産クサアリ亜属における最近の学名の変更. 蟻, 27: 25-27.
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日本蟻類研究会編(1988)日本産アリ類和名一覧.
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日本蟻類研究会編(1991)日本産アリ類の検索と解説(II)カタアリ亜科,ヤマアリ亜科.
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Radchenko, A. (2005) A review of the ants of the genus Lasius Fabricius, 1804, subgenus Dendrolasius Ruzsky, 1912 (Hymenoptera: Formicidae) from East Palaearctic. Annales Zoologici, 55: 83-94.
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寺山守・木原章(1994)日本産アリ類県別分布図.日本蟻類研究会.
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担当者
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吉村正志(2008改訂), 寺山 守・山内克典(〜2003)
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