family

アリ科

subfamily

フタフシアリ亜科

genus

アゴウロコアリ属



English
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ミヤコウロコアリ

Pyramica alecto


学 名

Pyramica alecto

原著論文

Bolton, B. (2000) The ant tribe Dacetini. Memoirs of the American Entomological Institute, 65: 1-1028.

シノニム

Pyramica alecto Bolton, 2000.
ミヤコウロコアリ : 吉村ら, 2008.
Pyramica benten (の一部:暫定的措置として) : アリ類データベース作成グループ, 2003a, b; Japanese Ant Database Group, 2003; 寺山, 2004.

解 説

 体長2.5 mm程度。頭部を測面から見た時に、頭頂部すぐ前方から頭の後ろ側にまで、短く、まっすぐな立毛をまばらに備える。触角柄節表面にはへら状の伏毛のみを持ち、立毛は持たない。背面から見た時に、前胸側背部が縁取られることはない。前胸背縁には短くまっすぐな立毛がまばらに分布する。前胸肩部には長い直毛を持つ。前胸背面は網目状の点刻で覆われる。中脚および後脚脛節外縁には、短い立毛を多数持つが、その長さは脛節の最大幅を越えない。腹柄節側面の海綿状付属物は長く、ほぼ腹柄節丘部前縁まで達する。
 園部氏が1991年に京都で採集した標本(2個体)に基づいて、Bolton(2000)で記載された種であり、Bolton(2000)以外での分布記録は今のところない。しかし、これまでも暫定的ながらイガウロコアリ Pyramica benten に統合して扱われていたため、これまでの分布記録の中には本種の記録が混在している可能性がある。
 ミヤコウロコアリPyramica alecto はイガウロコアリPyramica benten とケブカウロコアリPyramica leptothrix によく似ているが、Bolton(2000)によれば、イガウロコアリとは、1)イガウロコアリでは頭頂部より後方にしか短い立毛がないこと、2)頭部後方から頭部を見た時に、イガウロコアリでは頭部背面の立毛が8-10本程度であるのに対してミヤコウロコアリでは20本以上見えること、3)イガウロコアリの中・後脚の脛節外縁には、先端部を向いた伏毛しかないこと、4)イガウロコアリの前胸背面には、肩部をのぞいて立毛がないこと、5)イガウロコアリの前胸背面は点刻では覆われないこと、で区別できるとしている。またケブカウロコアリとは、1)ケブカウロコアリの前胸側背部は弱いながらも縁取られること(ミヤコウロコアリでは縁取られない)、2)ケブカウロコアリの触角柄節には立毛があること(ミヤコウロコアリには立毛がない)、3)ケブカウロコアリの頭部背面の立毛は頭盾後縁あたりまで全体に分布していること(ミヤコウロコアリの立毛は頭頂部前方までに分布)、4)ケブカウロコアリの後脚脛節外縁部の立毛は、後脚脛節の最大幅より長いこと(ミヤコウロコアリでは後脚脛節の最大幅を越えない)、で区別できるとしている。
 データベース2003年版(アリ類データベース作成グループ, 2003b)ではミヤコウロコアリをイガウロコアリの一部として扱っていた。これは、Ogata & Onoyama (1998)で言及されたイガウロコアリPyramica bentenの変異型に対する見解に沿ったものである。Bolton(2000)もこのことには触れており、P. alecto が、最終的にP. bentenのシノニムになる可能性を否定はしていない。ただし、データベース2003年版の解説で述べられていた頭山(1998)の「ボウズ型」はPyramica alectoにはあたらず、これは誤りであった。
 Bolton(2000)は、今後の検討が必要としながらも現時点での詳細な識別形質を提供しており、本種Pyramica alectoの独立性を判断するには、これら提供された形質を詳細に検証する必要があるだろう。しかし、この研究以降、未だ各形質に対しての具体的な反論は示されていない。よって、本改訂ではBolton(2000)の見解に従い、ミヤコウロコアリをイガウロコアリとは独立の種として扱う。


分 布

本州(京都府岩倉)

文 献

  • アリ類データベース作成グループ (2003a) 日本産アリ類全種図鑑. 学研, 東京.
  • アリ類データベース作成グループ (2003b) 日本産アリ類画像データベース. アリ類データベース作成グループ, 仙台.
  • Japanese Ant Database Group (2003) Ants of Japan. GAKKEN, Tokyo.
  • Ogata, K. & Onoyama, K. (1998) A revision of the ant genus Smithistruma Brown of Japan, with descriptions of four new species (Hymenoptera: Formicidae). Entomological Science, 1: 277-287.
  • 寺山 守 (2004) 日本産有剣膜翅類目録. Memoirs of the Myrmecological Society of Japan, 2: 1-123.
  • 頭山 昌郁 (1998) 広島市周辺にみられるイガウロコアリの変異型とその分布について. Edaphologia, 61: 1-5.
  • 吉村 正志, 久保田 政雄, 小野山 敬一 & 緒方 一夫 (2008) 日本産蟻類データベース2003年版以降の変更点. 蟻, 31.
担当者

吉村正志(2008)