family

アリ科

subfamily

フタフシアリ亜科

genus

カレバラアリ属


ITIS

 

Carebara sauteri

Hymenoptera On-Line

 

Carebara sauteri

FORMIS

 

Carebara sauteri


English
2003年英語版に
ジャンプします。

タイワンコツノアリ

Carebara sauteri


学 名

Carebara sauteri

原著論文

Forel, A. (1912) H. Sauter's Formosa-Ausbeute: Formicidae. Entomologische Mitteilungen 1: 45-81.

シノニム
 

Oligomyrmex sauteri Forel, 1912.
Oligomyrmex sauteri : 寺山, 1996, 1999, 2004.; アリ類データベース作成グループ, 2003a, b; Japanese Ant Database Group, 2003.
[以下の文献中のOligomyrmex sauteriは除く: Azuma, 1951; 日本蟻類研究会, 1988, 1992; 寺山 & 木原, 1994; アリ類データベース作成グループ, 1995.]
タイワンコツノアリ : 寺山, 1999.

解 説

 兵アリの体長2 mm。働きアリの体長は1 mm。体は赤褐色.兵アリの頭部はほぼ平滑で光沢をもつ。頭頂部に明瞭な1対の突起をもち,突起付近には4-6本の横じわがある。複眼は小さく,長径は触角柄節の幅より短い。触角は9節からなる。前・中胸背板は顕著に隆起し,中胸側板側面に斜行する溝はない。前伸腹節後縁は側方から見て弧をえがき,角ばらない。腹柄節下部突起は角ばるが,刺状にはならない。働きアリの頭部表面は平滑で光沢をもつ。複眼は1個の個眼からなる。触角は9節からなる。前胸背板は点刻でおおわれ,前伸腹節後縁は側方から見て弧をえがき,角ばらない。伸腹節刺は不明瞭。

 Oligomyrmex sauteri という学名は和名一覧以来データベース1995年版(アリ類データベース作成グループ, 1995)までコツノアリに対して使用されてきた。しかし、1996年に寺山は台湾産のO. sauteriとされる標本を多く検討し、1)横から見た中胸から前伸腹節にかけての背縁が台湾産のO. sauteriでは盛り上がること(コツノアリは直線状)、2)前伸腹節の後背縁が台湾産のO. sauteriでは角ばらないこと、3)大型働きアリの頭部に点刻がない大きな領域を持つこと、といった区別点を挙げて日本産コツノアリがO. sauteriではないことを示した(Terayama, 1996)。彼は同時にコツノアリを改めてO. yamatonisとして記載し、O. sauteriの日本での記録は尖閣諸島(北小島)に限定されると述べた。その後データベース1998年版では一旦O. sauteriの記録は抹消されており、1999年になって寺山は改めて尖閣諸島のO. sauteriにタイワンコツノアリという和名を与えて掲載している(寺山, 1999)。以上の事情からこの学名に関してはコツノアリとの間で混乱を生じるおそれがあり、少なくとも1996年より前に国内で記録されたO. sauteriはここで言うタイワンコツノアリとは別種であることに注意すべきである。
 タイワンコツノアリはデータベース2003年版(アリ類データベース作成グループ, 2003b)から改めて掲載されているものの、未だ2分岐検索表からはもれている。しかしながら日本産カレバラアリ属の他種の大型働きアリとは1)頭頂部に走る4-6本の横じわがあること、2)中胸側板側面に斜行する溝がないこと、そして小型働きアリとは1)頭部と前胸の点刻がなく、2)前伸腹節の後背縁が角ばらず丸いこと、で見分けることができる。
  2004年になって発表されたFerna`ndezの研究により、コツノアリ属Oligomyrmexはカレバラアリ属Carebaraのシノニムとされ、コツノアリ属に所属していた本種もカレバラアリ属の下に配置されることとなった(Ferna`ndez, 2004)。今回の改訂ではその措置に従って本種をタイワンコツノアリCarebara sauteri (Forel)とする。カレバラアリ属とコツノアリ属の分類学的な変更については属のページでも解説を加えているので参照されたい。


分 布

尖閣諸島(北小島);台湾,中国(?)

文 献
  • H. Sauter's Formosa-Ausbeute: Formicidae. Entomologische Mitteilungen 1: 45-81.



    追加引用文献:
  • アリ類データベース作成グループ (1995) 日本産アリ類画像データベース. 日本蟻類研究会, 東京.
  • アリ類データベース作成グループ (1998) 日本産アリ類画像データベース. 日本蟻類研究会, 東京.
  • アリ類データベース作成グループ (2003a) 日本産アリ類全種図鑑. 学研, 東京.
  • アリ類データベース作成グループ (2003b) 日本産アリ類画像データベース. アリ類データベース作成グループ, 仙台.
  • Ferna`ndez, F. (2004) The American species of the myrmicine ant genus Carebara Westwood (Hymenoptera: Formicidae). Caldasia, 26: 191-238.
  • Japanese Ant Database Group (2003) Ants of Japan. GAKKEN, Tokyo.
  • 日本蟻類研究会  編 (1988) 日本産アリ類和名一覧. 日本蟻類研究会, 東京.
  • 日本蟻類研究会  編 (1992) 日本産アリ類の検索と解説(III)フタフシアリ亜科,ムカシアリ亜科(補追). 日本蟻類研究会, 東京.
  • Terayama, M. (1996) Taxonomic studies of the Japanese Formicidae, part 2. Seven genera of Ponerinae, Cerapachyinae and Myrmicinae. Nature and Human Activities, 1, 9-32.
  • 寺山 守 (1999) アリ科. Pp. 138-317. In: 山根 正気, 幾留 秀一 & 寺山 守 (編) 南西諸島産有剣ハチ・アリ類検索図説. 北海道大学図書刊行会, 札幌.
  • 寺山 守 (2004) 日本産有剣膜翅類目録. Memoirs of the Myrmecological Society of Japan, 2: 1-123.
  • 寺山 守 & 木原 章 (1994) 日本産アリ類県別分布図. 日本蟻類研究会, 東京.
担当者

吉村正志(2008改訂)、寺山 守(〜2003)