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オモビロクシケアリ
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Myrmica luteola |
原著論文 |
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Kupyanskaya, A. N. (1990) Ants of the Far Eastern USSR. [in Russian]. Akademiya Nauk SSSR, Vladivostok. |
シノニム |
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Myrmica luteola Kupyanskaya, 1990.
Myrmica luteola : Masuko & Terayama, 2002; Yoshimura & Onoyama, 2002; アリ類データベース作成グループ, 2003a; Japanese Ant Database Group, 2003; 寺山, 2004.
オモビロクシケアリ : 寺山ら, 2002.
オオクシケアリ : 園部, 1976.
Myrmica sp. A : 園部, 1976.
Myrmica sp. 5 : 日本蟻類研究会, 1988, 1992; 寺山 & 木原, 1994; アリ類データベース作成グループ, 1995, 1998, 2003b.
ヒメツヤクシケアリ : 日本蟻類研究会,1992.
Manica sp. 2: 日本蟻類研究会,1992; 寺山 & 木原, 1994; アリ類データベース作成グループ, 1995, 1998.
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解 説
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体長5〜5.5 mm。体色は黄土色から褐色。野外では腹部はワックスがかった黄土色に見える場合が多い。頭部は相対的に幅広い。触角柄節は基部付近でやや強く曲がり,屈曲部で少し太くなる。頭盾前縁中央部は真っ直ぐかわずかにへこみ,突出する歯は備えない。胸部背面のしわはやや弱く不規則。腹柄節下部突起は前方に発達する。側方から見て腹柄節下縁の中央部が下方に凸状。中・後脚の脛節刺は小さく,少数の突起があるかほとんど単純。クロキクシケアリに似るが,側方から見て腹柄節下縁の中央部が下方に凸状であることや触角柄節の特徴から他種から容易に区別できる。働きアリでは前伸腹節刺は長いが,雌アリでは極めて小さく短く,単に角ばるだけで消失する場合が多い。また,雌アリの大きさは働きアリよりもやや小さく,エゾクシケアリに一時寄生する可能性がある。増子恵一氏(私信)は本種の雌1匹を約5,000 匹の働きアリをもつツヤクシケアリの巣から発見した。飼育観察下では寄生性の性質を示したという。
本種が初めて報告されたのは園部(1976)のMyrmica sp. Aであると思われ、その後和名一覧(日本蟻類研究会, 1988)にはオオクシケアリMyrmica sp. 5として掲載された。その後2002年にMasuko & TerayamaによってMyrmica luteolaと同定、再記載され、雌の生態情報も提供された(Masuko, K. & Terayama, M., 2002)。Yoshimura & Onoyama(2002)もRadchenkoの同定をもとにほぼ同時期にM. luteolaを日本初記録として発表しているが、出版時期が前者は8月で後者は12月であったため、前者が本種の日本での初確認となる。2002年には、寺山ら(2002)によりオオクシケアリからオモビロクシケアリへと和名の改称も提案され、データベース2003年版(アリ類データベース作成グループ, 2003b)では新しい和名を採用している。
富士山で増子氏によってツヤクシケアリManica yessensisの巣内から採集された本種の雌アリは、すでに検索と解説(III)(日本蟻類研究会, 1992)においてツヤクシケアリ属の学名未決定種ヒメツヤクシケアリManica sp. 2として掲載されていた。2003年版(アリ類データベース作成グループ, 2003b)ではこのことに触れ、データベース1998年版(アリ類データベース作成グループ, 1998)まで掲載されていたヒメツヤクシケアリをオモビロクシケアリに統合している。
疎林や岩場の石下や木の根元に営巣する。ササの葉上を歩いたり,アブラムシに来たりする。飛出は9月から10月中旬。
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文 献
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- Myrmecological Society of Japan, Editorial Committee (ed.) (Ed.). (1988). A list of the ants of Japan with common Japanese names. The Myrmecological Society of Japan, Tokyo.
- Myrmecological Society of Japan, Editorial Committee (ed.) (1992). A guide for the identification of Japanese ants (III). Myrmicinae and suppliment to Leptanillinae (Hymenoptera: Formicidae). 94pp. The Myrmecological Society of Japan, Tokyo.
追加引用文献:
- アリ類データベース作成グループ (1995) 日本産アリ類画像データベース. 日本蟻類研究会, 東京.
- アリ類データベース作成グループ (1998) 日本産アリ類画像データベース. 日本蟻類研究会, 東京.
- アリ類データベース作成グループ (2003a) 日本産アリ類全種図鑑. 学研, 東京.
- アリ類データベース作成グループ (2003b) 日本産アリ類画像データベース. アリ類データベース作成グループ, 仙台.
- Japanese Ant Database Group (2003) Ants of Japan. GAKKEN, Tokyo.
- Masuko, K. & Terayama, M. (2002) Behavioral notes and redescription of the socially parasitic ant Myrmica luteola (Hymenoptera: Formicidae). Journal of the New York Entomological Society, 110: 224-233.
- 寺山 守 (2004) 日本産有剣膜翅類目録. Memoirs of the Myrmecological Society of Japan, 2: 1-123.
- 寺山 守 & 木原 章 (1994) 日本産アリ類県別分布図. 日本蟻類研究会, 東京.
- 寺山 守, 小野山 敬一, 緒方 一夫 & 吉村 正志 (2002) 和名に関する覚え書き. 蟻, 26: 48-50.
- Yoshimura, M. & Onoyama, K. (2002) Male-based keys to the subfamilies and genera of Japanese ants (Hymenoptera: Formicidae). Entomological Science, 5: 421-443.
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担当者
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吉村正志(2008改訂)、小野山敬一・吉村正志・園部 力(〜2003)
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