family

アリ科

subfamily

ハリアリ亜科

genus

アギトアリ属


ITIS

 

Odontomachus kuroiwae

Hymenoptera On-Line

 

Odontomachus kuroiwae

FORMIS

 

Odontomachus kuroiwae


English
2003年英語版に
ジャンプします。

オキナワアギトアリ

Odontomachus kuroiwae


学 名

Odontomachus kuroiwae

原著論文
 

Matsumura, S. (1912) Thousand insects of Japan. Supplement IV. Keiseisha, Tokyo.


シノニム
 

Myrtoteras[スペルミス] kuroiwae Matsumura, 1912.
Myrmoteras kuroiwae : Matsumura & Uchida, 1926.
Odontomachus kuroiwae : Creighton, 1939; 寺山, 2004; Yoshimura et al., 2007.
オキナワアギトアリ :寺山, 1999.
クロイハキアリ : Matsumura, 1912.
ノコギリハリアリ : 矢野宗幹, 1932.
Odontomachus monticola formosae(の一部として) : 矢野宗幹, 1932.
Odontomachus monticola var. formosae : Teranishi, 1940.
Odontomachus monticola(の一部として): Brown, 1976; 日本蟻類研究会, 1988, 1989; 寺山 & 木原, 1994; アリ類データベース作成グループ, 1995, 1998.
アギトアリ: 安松, 1965?など.
Odontomachus sp. : 寺山, 1999; 寺山 & 北出, 2005.
Odontomachus sp. 2 : アリ類データベース作成グループ, 2003a, b; Japanese Ant Database Group, 2003.
クロイワアギトアリ : 寺山, 2004.

解 説

 体長約9〜10 mm。頭部および胸部は褐色,腹部は黒褐色。大あごの亜先端歯は,その長さが幅の約2倍で細長い。後頭部にはしわがなく,平滑である。これらの2つの点でアギトアリから容易に区別できる。雄アリでは横から見た腹柄節の丘部がアギトアリよりも顕著に低く、また腹部末端に見える生殖器の先端が長く後方に伸びることで区別することができる。雌は働きアリにくらべてひとまわり大きい程度である。多雌性。
 本種の初記録は古く、1912年にすでにMatsumuraによってクロイハキアリMyrtoteras kuroiwaeとして記載されている(Matsumura, 1912)。このときのMyrtoterasという属名はハンミョウアリ属Myrmoterasのスペルミスであり、このことは後のMatsumuraらの文献で確認できる(Matsumuraら, 1926)。その後Creighton(1939)はこの種の所属をハンミョウアリ属ではなくアギトアリ属Odontomachusであることを明らかにし、これが日本のアギトアリ属の初記録ということになった。
 その後、矢野(1932)やTeranishi(1940)によってOdontomachus monticola の亜種または変種O. m. formosaeとして扱われ、さらにYasumatsu(1962)がOdontomachus monticola formosaeO. monticolaに統合して以降、屋久島や九州と同種のアギトアリOdontomachus monticolaとして長らく扱われることになる(アギトアリも参照)。
 1985年になり、第29回日本蟻類研究会大会の講演において当時同会会長であった森下氏が沖縄に分布するアギトアリの分類学的な扱いに疑問を呈した(森下, 1987)。1999年になって寺山氏はこの森下氏の見解に従って、図説の中で沖縄本島と沖永良部島に分布するものをアギトアリから分離し、オキナワアギトアリO. sp.として改めて報告している(寺山, 1999)。データベース2003年版ではこの見解を採用し、オキナワアギトアリをアギトアリとは分けて掲載しているが、この中の英語版(アリ類データベース作成グループ, 2003b)およびAnts of Japan(Japanese Ant Database Group, 2003)には、オキナワアギトアリの分布記録の「沖永良部島」を、「口之永良部島」と間違えて収録していた(Yoshimuraら, 2007)。
 2004年に発表された目録の中で寺山氏はオキナワアギトアリに充てる学名としてOdontomachus kuroiwaeを復活させたが、O. kuroiwaeのタイプ標本との同一性や、既に沖縄産の標本を検討してOdontomachus kuroiwaeO. monticolaに統合したBrown(1976)の見解には言及しなかった。
 2007年になり、YoshimuraらがOdontomachus kuroiwaeO. monticola formosae、そしてO. monticola、のタイプ標本を含む沖縄や九州、東南アジアの標本を再検討した研究を発表し、それによってオキナワアギトアリがOdontomachus kuroiwaeという独立種であることが再確認された(Yoshimuraら, 2007)。この中でYoshimuraらは、計測値のほか、雄アリの形態を新たに示し、腹柄節や生殖器がForel氏同定の台湾産の標本や、九州・屋久島産のアギトアリのものとは大きく違っていることを根拠として挙げている。
 沖縄本島では飛出は7月上旬〜中旬に行なわれると思われる。石下や高木根周の土中に営巣する。

分 布

沖永良部島,沖縄本島

文 献

  • 寺山 守 (1999). アリ科.山根正気・幾留秀一・寺山守,「南西諸島産有剣ハチ・アリ類検索図説」,pp. 138-317. 北海道大学図書刊行会,札幌.



    追加引用文献:

  • アリ類データベース作成グループ (1995) 日本産アリ類画像データベース. 日本蟻類研究会, 東京.

  • アリ類データベース作成グループ (1998) 日本産アリ類画像データベース. 日本蟻類研究会, 東京.

  • アリ類データベース作成グループ (2003a) 日本産アリ類全種図鑑. 学研, 東京.

  • アリ類データベース作成グループ (2003b) 日本産アリ類画像データベース. アリ類データベース作成グループ, 仙台.

  • Brown, W. L., Jr. (1976) Contributions toward a reclassification of the Formicidae. Part VI. Ponerinae, tribe Ponerini, subtribe Odontomachiti. Section A. Introduction, subtribal characters. Genus Odontomachus. Studia Entomologica, 19: 67-171.

  • Creighton, W. S. (1939) A generic reallocation for Myrmoteras kuroiwae. Journal of the New York Entomological Society, 47: 39-40.

  • Japanese Ant Database Group (2003) Ants of Japan. GAKKEN, Tokyo.

  • Matsumura, S. & Uchida, T. (1926) Die Hymenopteren-Fauna von den Riukiu-Inseln. Insecta Matsumurana, 1: 32-52.

  • 森下正明 (1987) 日本産Odontomachus の謎(in 蟻類研究会第29会例会講演要旨). 蟻, 15: 4.

  • 日本蟻類研究会  編 (1988) 日本産アリ類和名一覧. 日本蟻類研究会, 東京.

  • 日本蟻類研究会  編 (1989) 日本産アリ類の検索と解説(I)ハリアリ亜科,クビレハリアリ亜科,クシフタフシアリ亜科,サスライアリ亜科,ムカシアリ亜科. 日本蟻類研究会, 東京.

  • Teranishi, C. (1940) Works of Cho Teranishi. Memorial Volume. [In Japanese, English and German, in part.]. Kansai Entomological Society, Osaka.

  • 寺山 守 (2004) 日本産有剣膜翅類目録. Memoirs of the Myrmecological Society of Japan, 2: 1-123.

  • 寺山 守 & 北出 理 (2005) アギトアリの北九州からの記録. 蟻, 27: 9.

  • 寺山 守 & 木原 章 (1994) 日本産アリ類県別分布図. 日本蟻類研究会, 東京.矢野宗幹 (1932) 膜翅目蟻科. Pp. 328-340. In: 内田清之助ら (編) 日本昆虫図鑑. 北隆館, 東京.
    Yoshimura, M., Onoyama, K. & Ogata, K. (2007) The Ants of the Genus Odontomachus (Insecta: Hymenoptera: Formicidae) in Japan. Species Diversity, 12: 89-112.


担当者

吉村正志(2008改訂)、小野山敬一・吉村正志(〜2003)