ツヤシリアゲアリ

学　名

Crematogaster nawai

Ito, T. (1914) Formicidarum Japonicum species novae vel minus cognitae. Annales de la Soci師? Entomologique de Belgique 58: 40-45.

Crematogaster laboriosa Smith, F. 1874， トビイロシリアゲアリ (矢野, 1910) ， コシボソシリアゲアリ (寺西, 1915) ， Crematogaster auberti var. nawai Ito 1914， Crematogaster (Acrocoelia) nawai: Emery, 1922e， Crematogaster laboriosa nawai: Santschi, 1930d， ムネツヤシリアゲアリ (岡野, 1950) ， Crematogaster nawai: Onoyama, 1998，

体長２.５〜４mm。体色は褐色から黒褐色。頭部背面と腹部背面後半部がやや暗色の場合がある。触角べん節のこん棒部は３節。前・中胸縫合線は不明瞭で，側方から見て背縁は中胸前端で高くなる。前胸背板全体と中胸背面は滑らか。中胸背面は凸状で，側方で縁どられない。中胸背面中央に，かすかながら縦隆起線が認められる。中胸側板は後半部が点刻される。後胸溝は明瞭に刻まれ，背面側縁部でも薄板状のもので溝は妨げられない。前伸腹節刺はやや長く，側方から見て細い三角形状。腹柄節下部突起は前方に小さく歯状に突出する。腹柄節の長さは幅よりも少し長く，側縁は背方から見て後方で狭まる。後腹柄節背面は中央で縦にへこむ。他種からは，中胸背面が凸状で側方で縁どられないことや腹柄節の長さは幅より長いことによって区別できる。
なお，Onoyama（1976）より前の laboriosa は誤同定の可能性がある（Onoyama，1980）ので，注意が必要である。Onoyama (1998) によって，C. nawai はC. laboriosa Smith, 1874 のシノニムとされたが，C. laboriosa は C. laboriosus Smith, 1860 のホモニムであるため，C. nawai が有効名となる。
海岸付近に多く，石下やまれに枯木内に営巣する。

久保田注：ツヤシリアゲアリの学名にはC. laboriosa F. Smith (1874)とC. auberti var. nawai Ito (1914)とがある。もし，Smith (1874)が有効ならば命名年代からして問題はないが，Smithは別にSolenopusis(トフシアリ）の仲間にC. laboriosa (1860)の学名を与えてしまった。従って単純に考えれば，日本のlaboriosa (1874)は，junior homonym となって，nawaiが正当な学名に格上げされる。
　しかし，今までだれも1860年の方のlaboriosaの標本を調べたり，その名称の有効・無効性をチェックした人はいない。このことは，Boltonも言及していて彼のgeneral catalogueで"unresolved junior primary homonym"と言っている。その上で，リストにはシリアゲアリの方のC. laboriosa を太文字にしてあり，C. nawaiは細字で表記しているので，Boltonは現時点では従来のC. laboriosaを認めているものと解釈できる。
そこで，当面Boltonに従ってC. laboriosaを採用するべきではないか。

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