属解説

ヤマアリ属 Formica

ヤマアリ亜科/ヤマアリ族


 働きアリの体長は3.5〜7mm。ほぼ単型。複眼は比較的大きい。単眼は明瞭。触角は12節。額域は明瞭に区画される。額隆起縁は鋭く隆起するが短く,後方で少し広がる。大あごはやや細長い三角形で,そしゃく縁には5〜12個の歯がある。小あごひげは6節で時には5節。下唇ひげは4節。後胸溝は明瞭で,前伸腹節は前・中胸背面の高さよりも明らかに低い。前伸腹節気門は後縁からはなれて位置し,スリット状。腹柄節は横にひろがる鱗片状で,腹面部は鋭い隆起縁をもつ。後脚脛節に2列の剛毛を備える。

 雌アリは働きアリよりもずっと大型。後胸溝は不明瞭。前翅には中央室と肘室を持つ。雄アリは触角が13節で柄節は長い。外部生殖器は大きく,尾毛はよく発達する。

 地中に営巣するが,ヤマアリ亜属やツノアカヤマアリ亜属のものはさらに地表部に枯枝や枯葉を使った塚もつくる。おもに昆虫の死体などを餌とするが,アブラムシや花蜜を求めて樹上や草本にもよく登る。

 旧北区と新北区に分布し,約120種が記載されている。8つの亜属(これらを種群とする考えもある)が設けられているが,日本には4亜属9種(うち学名未詳種は1種)が分布する。

 日本に分布する4亜属の特徴を以下に記す。

 アカヤマアリ(Raptiformica)亜属。頭盾前縁部が明瞭にくぼみ,雄アリの大あごのそしゃく縁に5〜6歯をもつ(他の亜属ではより少数の歯をもつ)。また,雌アリの胸部が狭いことが特徴である。奴隷狩りをする。旧北区に2種,新北区に約10種が知られる。

 ツノアカヤマアリ(Coptoformica)亜属。頭部後縁中央部が深く湾入し,小あごひげが短くなる傾向がある。雌アリ前胸の前面と背面の間は強く角ばり,また体が著しく小型化する傾向がある。旧北区に15種が記録されている。なお,新北区のexsectoidesの仲間は本亜属とは別系統のものらしい。

 ヤマアリ(Formica)亜属。体色は少なくとも一部は強く赤味を帯び,二色性を示す。額域は光沢がある。また次のクロヤマアリ亜属と比べて,職きアリは一般により頑丈な体型をしているが,雌アリはむしろ小型である。蟻塚をつくるものが多く,北欧では wood ant の名で森林の害虫駆除に利用している。営巣は一般に分巣方式である。旧北区に約7種,新北区に約16種が知られる。

 クロヤマアリ(Serviformica)亜属。体色は単色ないし二色型であるが,日本産のものは全て単色型。額域の光沢はふつう鈍い(ツヤクロヤマアリでは光沢あり)。体はヤマアリ亜属とくらべると一般に華奢である。独立営巣型である。染色体数は他亜属のものは2n=52であるが,本亜属の大部分のものは2n=54である(ただしツヤクロヤマアリは2n=52)。旧北区産約21種,新北区産約33種で,ヤマアリ属中最大のグループである。

解説者:園部 力雄・小野山敬一


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