属解説

サムライアリ属 Polyergus

ヤマアリ亜科/ヤマアリ族


 働きアリは単型で,体長5〜10 mm。複眼,単眼ともにクロヤマアリ属と同様に顕著である。触角は短く,12節。頭盾前縁はほぼ直線状で,中央で突出することはない。大あごは鎌状で明瞭な歯を持たない。小あごひげは4節,下唇ひげは2節でともに短い。胸部は頑丈で,前中胸縫合線と後胸溝は明瞭。前伸腹節はやや高く隆起する。腹柄節は厚く,頂部は側方からみて丸い。体色はsamurai と nigerrimus は黒色で,他は赤色がかる。大きさや胸部の形態などはクロヤマアリ属に似るが,頭盾,大あご,腹柄節などの形態によって区別される。

 雌アリは有翅。働きアリにくらべて著しく大きくなることはない。胸部の条溝は他のアリ同様,働きアリに比べて細かく区分される。ヨ−ロッパの rufescensでは正常雌と共に無翅の職型雌(ergatogyne)が発生することが知られている。雄アリはより小型で額稜を欠く。大あごは小さくまっすぐで,とがっている。触角は非常に短い。生殖板は小さく単純である。

 本属のすべての種が他種の働きアリを奴隷として使役する。卵・幼虫の世話や採餌などの巣の維持のための行動を自らは行わない。奴隷種はヤマアリ属で,ほとんどはクロヤマアリ亜属の種であるが,lucidus のみはNeoformica亜属のものを奴隷種としている。奴隷となるアリのコロニーを集団で襲い,その蛹もしくはごく終令の幼虫をつれて帰り,自らの巣に使役奴隷アリが少なくなると再び襲うという周期的な奴隷狩りを行う。

 全北区に5種(breviceps:北米;lucidus:北米;nigerrimus:西シベリア;rufescense:北米・ヨーロッパ;samurai:極東アジア)が分布する(H"olldobler & Wilson, 1990)。北米やヨーロッパ産の種では体色が赤みがかる。特にrufescensはamazon antの名で古くからその習性が知られている。日本にはサムライアリ1種のみが分布する。

解説者:園部 力雄・緒方 一夫・小野山敬一


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