属解説

シリアゲアリ属 Crematogaster

フタフシアリ亜科/シリアゲアリ族


 働きアリは小〜中型のアリ。頭部は略四角形あるいは丸く,側面はふつう凸状。大あごは小さく,少なからぬ部分が頭盾におおわれる。そしゃく縁には3〜5歯を備える。PFは 5,3,まれに4,3。頭盾前縁は真っ直ぐか広く凸に弧を描く。額隆起縁は短い。触角は11節,まれに10節。べん節のこん棒部は2〜4節,あるいはこん棒部を形成しない。複眼は中くらいの大きさで,頭部側方の中央かすぐ後方に位置する。胸部は短い。後胸溝は明瞭。前伸腹節刺はないものから長く尖るものまで変異がある。腹柄節は上下に平たく,丘部はない。後腹柄節の後部は腹部背面に接続する。腹部は背方から見て三角形状。

 世界に広く分布し,約400種が記載されている大きな属である。多くは温暖な地域に生息するが,分類はあまり整理されていない。北アメリカのシリアゲアリ属については Buren(1958,1968)による研究がある。樹上に絹の巣をつくったり,植物組織内や竹茎内,石下や土中に営巣する。敵に対して,腹部を前上方に持ち上げて化学的防御物質を放出する習性がある。

 日本産のシリアゲアリ属の分類はかなり混乱していた。Santschi(1930)の分類は亜種や変種の取り扱いを除いて正確である(Onoyama,1976)。日本に産するものとして,「和名一覧」と同じく,本書ではシリアゲアリ亜属の5種(学名決定種4種,未詳種1種)とキイロシリアゲアリ亜属の2種(学名決定種1種,未詳種1種)の計7種をあげた。

解説者:小野山敬一・森下 正明


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