本属は全北区に広く分布し,裸地から森林にかけてごく普通に見られるアリである。多くの種でアブラムシやカイガラムシ類が出す甘露を吸汁し,またこれらと強い共生関係を持つものも多い。顕著なアリ道を作ることも知られている。
日本産の本属に関しては,Wilson (1955)によって11種が記録された後に,Yamauchi (1978) や Yamauchi & Hayashida (1968, 1970)によって4亜属16種が明らかとなった。また分布,営巣場所,結婚飛行等の生態に関するものとして,Yamauchi (1980) や山内(1981),Yamauchi et al. (1986)がある。日本産の4亜属の概略は以下の通りである:
ケアリ(Lasius s. str.)亜属。地表活動性でよく目につく。日本から5種が知られている。働きアリでの区別が難しい種も含まれている。
クサアリ(Dendrolasius)亜属。日本から5種が知られており,他の亜属の種に一時的社会寄生を行う。働きアリは形態的に酷似しているが,特に腹柄節の形によって区別される。雌アリでの区別は比較的容易である。木の根元等にカートン製の巣を作り,またサンショウ様の強い臭気がある。恒常的な幹蟻道(trunk trail)を作り,働きアリは巣と樹上や幹にいるアリマキの間を往復する。
アメイロケアリ(Chthonolasius)亜属。日本から3種が知られているが,働きアリでは区別が出来ないものがある。他の亜属の種に一時的社会寄生を行う。地中活動性である。
キイロケアリ(Cautolasius)亜属。日本から3種が知られている。地中活動性でネアブラムシと共生関係にあり,これらの分泌物を主要な餌源としているようである。
解説者:寺山 守・山内 克典