属解説

ケアリ属 Lasius

ヤマアリ亜科/ケアリ族


 体長 2.5 〜 5 mmの中型のアリで,体色は黄淡色から漆黒色まで見られる。頭部は亜三角形で後縁は直線状か多少ともくぼむ。複眼は発達したものから比較的小さいものまであり,働きアリでも3個の単眼を持つ。頭盾中央部に縦走する額稜が顕著。大あごは7〜12歯を備える。PFは6,4。触角は12節で,触角挿入部は頭盾後縁部の近くに位置する。触角第3〜7節の各節は8〜12節の各節よりも短い。側方から見て胸部背面は 前・中胸背部と前伸腹節背部の2つの凸部からなり,前伸腹節背面の凸部は前・中胸背面のそれよりも一段と下位に位置する。前伸腹節の気門はほぼ円形。前・中胸背には軟毛や剛毛が不規則に乱立する。ケアリ(Lasius)亜属,クサアリ(Dendrolasius)亜属,アメイロケアリ(Chthonolasius)亜属,キイロケアリ(Cautolasius)亜属,および日本には分布しないがAustrolasius亜属の5亜属約40種からなる。

 本属は全北区に広く分布し,裸地から森林にかけてごく普通に見られるアリである。多くの種でアブラムシやカイガラムシ類が出す甘露を吸汁し,またこれらと強い共生関係を持つものも多い。顕著なアリ道を作ることも知られている。

 日本産の本属に関しては,Wilson (1955)によって11種が記録された後に,Yamauchi (1978) Yamauchi & Hayashida (1968, 1970)によって4亜属16種が明らかとなった。また分布,営巣場所,結婚飛行等の生態に関するものとして,Yamauchi (1980) 山内(1981)Yamauchi et al. (1986)がある。日本産の4亜属の概略は以下の通りである:

 ケアリ(Lasius s. str.)亜属。地表活動性でよく目につく。日本から5種が知られている。働きアリでの区別が難しい種も含まれている。

 クサアリ(Dendrolasius)亜属。日本から5種が知られており,他の亜属の種に一時的社会寄生を行う。働きアリは形態的に酷似しているが,特に腹柄節の形によって区別される。雌アリでの区別は比較的容易である。木の根元等にカートン製の巣を作り,またサンショウ様の強い臭気がある。恒常的な幹蟻道(trunk trail)を作り,働きアリは巣と樹上や幹にいるアリマキの間を往復する。

 アメイロケアリ(Chthonolasius)亜属。日本から3種が知られているが,働きアリでは区別が出来ないものがある。他の亜属の種に一時的社会寄生を行う。地中活動性である。

 キイロケアリ(Cautolasius)亜属。日本から3種が知られている。地中活動性でネアブラムシと共生関係にあり,これらの分泌物を主要な餌源としているようである。

解説者:寺山 守・山内 克典


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