ひとあじ違う害虫の話(8):アリ 近藤正樹 (白梅学園短期大学教授 理学博士)
グリーンコミュニケーション1996no.13:16-22より許可を得て掲載


「アリ」の形態的特徴

図1 シロアリ(上)とアリ(下)
1)腹柄節がある 2)後羽は短い 3)触角柄節が長い
 「アリ」は「ハチ」の仲間と紹介しましたが、羽もなければ毒針もないと思っている方もありましょう。実は羽が4枚あり、前羽は大きく後羽は小さく、後羽の前縁に鉤がついていて前羽に引っかけて一枚につないで飛ぶハチ形の羽を持っているのが基本形です。でも発育不良のアリは羽が退化します。よく見かけるアリはハタラキアリと言って栄養不足のためにメスアリになれなかった型なのです。



図2 アリに似た動物
 「アリ」と「ハチ」の違いは「アリ」には胸と腹の間に一筋または二筋の節があることです。 腹柄節といい、「ハチ」ばかりでなく、 他のアリに似た小動物からの区別にも有効な特徴です。比較形態学の知識からは、 腹部第二節または二・三節が変形したものと考えられています。 ちなみに腹部第一節は 胸に貼りついていて前伸腹節と言われています。 この腹柄節の数や形によって「アリ」の分類がすすめられていくので重要な特徴です。